先日投稿した「読むということ」の続きになりますが、読書について。
活字離れ
最近の子は読書をしないと言われていますが、本当でしょうか? TVが各子ども部屋にありゲーム機が普及、ネットで好きなことができるようになった今、読書以外に多くの時間が使われています。これなら読書の時間が減っていると考えられますよね。しかし、公益社団法人 全国学校図書館協議会の調査では、ここ10年のあいだ、1ヶ月間の平均読書冊数は上がってきています。
公益社団法人 全国学校図書館協議会、毎日新聞社
「第59回読書調査」より
ゆとり世代
ゆとり教育が始まったのは2002年度。上記のデータではその年辺りから読書量が増えているのがわかります。単純に「ゆとり教育」と「活字離れ」を結びつけて「ゆとり世代は読書してないから」などと決め付けてはいけないですね。
国語を読む習慣
じゃあ先日の投稿でお話した「国語を読む習慣」って、そんなに心配する必要がないんじゃない?と思われますよね。しかし、実際の塾の現場では、国語の読解問題で生徒に本文の音読をさせると、あまり読めない生徒もいます。黙読で10分の制限時間で問題演習をすると最後まで解いているのに、音読をさせると つっかえながら読むので、本文を読むだけで10分以上かかる生徒もいます。これは黙読で問題を解いているときは、あまり本文を読んでことが原因と考えられます。
読んでるつもり
学校でも、朝読書のように読書の時間を作っているので、多くの生徒が読書をしているはずですが、読書をしている生徒の中にも、実質読めていない生徒もいると考えられます。読書のような黙読では、文字の表面だけを目で追いかけているだけの生徒もいるのです。学校教育の取り組みで、本に触れる機会が増えたことは良いことです。しかし、その中に何人かいると思われる「読んでいるつもり」の生徒を見つけ、読むという行動を教えてあげなければなりません。
読まない生徒
また、ここで注目したいのは不読者数です。割合からすると、小学生で5%前後、35人のクラスで1~2人の割合です。中学生になると3倍の15%前後まで上がり、1クラス5~6人になり、高校生では半数近くになってしまいます。せっかく小学校で身に付けた読書習慣をやめてしまう中学生・高校生が多くなっています。私の経験から中学以降に不読書者になる子の多くは、小学校時代から家でほとんど読むことをしないのです。「マンガや雑誌すら家では読んでいるところを見かけません。」こう言う保護者の声も聞かれます。
公益社団法人 全国学校図書館協議会、毎日新聞社
「第59回読書調査」より
マンガや雑誌でも
割合としては少ないかもしれませんが、個別指導ではこのような「不読者」や「読んでいるつもり」の生徒に読書を楽しんでもらうよう指導し、国語力を付けていかなければなりません。そのため、スポーツが好きな子にはスポーツ系の、コンピュータに興味を示す子にはコンピュータの雑誌やマンガを読むことを勧めています。実際、授業でも雑誌を使った読解を行うこともあります。興味のある分野で、活字から知識や情報を得る喜びを体験してもらっています。
年齢に応じた内容
小学生が読む本は、活字も大きく読み仮名が書いてあるものも多く、内容も易しい物、いわゆる児童文学がほとんどです。中学生位からは、文庫本など活字の小さくページ数の多いものとなり、内容も大人が読む本と変わりなくなっていきます。小学生で読書をやめてしまうと、内容の難しい物を読む機会が減ってしまいます。当たり前ですが、児童文学は素晴らしい作品が多く、読解力の向上だけでなく、豊かな感受性を育ててくれ、様々な考え方を教えてくれます。しかし、ここで止まってしまって良いのでしょうか?中学生からは、学習内容が難しくなるだけでなく、対人関係も小学校時代とは違う大人として扱われる機会が増えてきます。先生や先輩が使う言葉、教科書に出てくる言い回しも違ってきます。語彙を増やす、コミュニケーション力を上げるためにも継続した読書が大事です。
ご家庭の協力
読書の習慣を持ち続け、年齢にあった内容の物が読める力を付けるためには、学校や塾だけでなく、ご家庭での環境も必要です。割合としては低いかもしれませんが、あまり読書をしない生徒(前述の通りこれは最近増えたのではなく昔からいた)と、内容の易しい物しか読めない生徒に興味を持ってもらう環境作りです。いきなり難しい物を無理やり与えても逆効果です。雑誌でもマンガでも構わないので、興味がある物をできるだけ多く読むようにさせてあげましょう。
本の共有
できれば、お父さん・お母さんも家で読書している姿を見せてあげてください。お子さんが興味を持ちそうな雑誌などを読んで、「ここ面白いから読んでみて」など、ほんの数ページを勧めてあげるのも良いでしょう。こうすることで活字に対する興味だけでなく、さらに家族の絆が深まります。家族で本を共有すること(単純に本を物質的に共有するだけでなく、知識・感情などの内容も共有すること)によって連帯感が生まれるからです。学校で共通の趣味を持っていたり、同じアイドルが好きな子たちが集まって仲良くしているのは、その仲間内でだけ共有しているものがあるからです。
教えてもらいましょう
また、お子さんが読んでいる本・雑誌を貸してもらって読んでみて、「これってどういうこと?」と聞いてみるのも良いでしょう。「教えてあげる」という行動が、さらに知的好奇心を刺激します。ただ、中学生ぐらいの反抗期真っ只中のお子様には、しつこくしすぎると うざい と思われてしまいますので、ほどほどに。
コメント
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[…] 「やっぱり ゆとり教育以降 活字離れしているの?」のブログで、公益社団法人 全国学校図書館協議会さまの「第59回読書調査」のデータを使わせていただきました。データ使用にあた […]